氷室冴子著作年表

古本ぺんぎん堂のイベント出品のコーナーである
ぺんぎん百貨店8階催事場では、第5回の催しとして

「シンデレラ迷宮―氷室冴子の世界―」

を開催させていただきました。
2008年6月6日に、惜しまれつつ亡くなった店主の大好きな作家・氷室冴子さんへの追悼の思いを込めて、彼女の作品をできるかぎり紹介しようという企画です。
『しーの』を主人公に北海道のミッションスクール徳心女学園を舞台にしたクララ白書」「アグネス白書のシリーズや、教科書の中の退屈な「古典」しか知らなかったあたしたちに、主人公が生き生きと動き回る生身の人間ドラマとして、楽しさいっぱいの平安王朝絵巻を見せてくれたざ・ちぇんじ!なんて素敵にジャパネスクのシリーズ、お伽話や外国文学の主人公たちと一緒に夢の世界で恋して泣いたシンデレラシリーズ、甘酸っぱい中学生時代を思い出すボーイガールシリーズ、いやいや、なんと言っても銀金(銀の海金の大地)でしょっ!
などなど、読者の数だけ、思い入れの深い「あの本」があるはず。

そんな本たちと、あなただけの思い出を、もう一度、心に呼び覚ますきっかけになれば・・・。
今となっては、ほとんどが絶版や版元品切れになってしまった氷室さんの本に再会するお手伝いができれば・・・。
そして、氷室冴子を知らない若い人にも
彼女の作品に触れて欲しいという企画でした。

古本ぺんぎん堂で現在販売中またはかつて販売した氷室冴子さんの本は
こちら←クリックしてください。
で紹介しています。
(それぞれの本のタイトルまたは商品画像をクリックすると、店主のブックレヴュー他、商品の詳細が見られます。)

*店のトップページ右のカテゴリー「店主の好きな作家―氷室冴子」からも入れます。

以下は、店主が自分なりに作成した氷室冴子作品年表です。
なんとフリーページ3ページを使っての超大作になってしまいました。
イベントは終了しましたが、この年表は残すことにしました。
読み物として資料として、お楽しみいただければ、さいわいです。



☆氷室冴子作品年表☆
1978〜1990年

1978年


「白い少女たち」

(集英社文庫コバルトシリーズ)
1978年10月20日発行
定価220円
イラスト:金本京子







★度重なる転校で、人とあわせることを覚え、天真爛漫な明るさでどこへ行っても人気者だが、心の奥では孤独を抱える碧。碧のルームメイトで中等部一の美少女にして、クラス委員長と副舎長も務める瑞穂。抜群の成績と理知的な性格で、みんなから慕われながらも、どこか人を寄せ付けない雰囲気を持つ倫子。瑞穂の親友で目立たない少女・塚田千佳が突然失踪するという事件をきっかけに3人の心が大きく揺れ始める。北国の女子学園を舞台に、繊細で感性豊かな少女たちの愛と友情を描いた書き下ろし長編小説。
氷室さん初の書籍化作品。大学4年の教育実習の頃、毎日徹夜をして書いたという。前年(1977年)に「さようならアルルカン」で雑誌『小説ジュニア』第10回青春小説新人賞佳作に入選した氷室さん。「アルルカン」は中編で、それだけでは原稿が足りなかったのか、長編であるこの作品が先に文庫化された。
六年間一貫教育の札幌のミッションスクール。コロナ舎とフェリス舎という高等部・中等部の寄宿舎。文体が三人称で内容はかなりシリアスだが、クララ、アグネスの設定の原型はここにすでにある。


1979年


「さようならアルルカン」

集英社文庫コバルトシリーズ
1979年12月15日発行
定価260円
イラスト:こうのこうみ







★小学校6年のときから、ずっと見つめてきた彼女。こうでありたいと思う自分、覆いをはずした本当の自分にも似た憧れの同級生であり美しいアウトサイダーであった真琴は、現実に敗北して、道化師に成り下がってしまったのか?思春期の少女の潔癖な正義感や、幼いながらも「ありのままの自分」でありたいと願う心を繊細に描いた表題作「さようならアルルカン」、おとなとこどもの狭間のほんの短い壊れ物のような「少女の時間」を『鏡の国のアリス』をモチーフに巧みに表現した「アリスに接吻を」、病弱な姉にかかりきりの父に、かえりみられない孤独を抱える少女の深い心の闇を切実な叫びのように凝縮した「妹」、大切な友達と、大好きなボーイフレンド。友情ゆえに心が揺れて、初めての恋に戸惑って・・・親友同志である、こゆみ、と宵子のそれぞれの思いをコミカルに描いた「誘惑は赤い薔薇」の4編を収録した作品集。
店主が初めて読んだ氷室さんの本がこれでした。中学1年生だった。今回読み返してみて、細部までかなり鮮明に覚えていたことにびっくり。1977年の『小説ジュニア』第10回青春小説新人賞佳作に入選した氷室さんの実質的なデビュー作「さようならアルルカン」は、「本当の自分」と「みせかけの自分」のギャップに悩む主人公という、ある意味、氷室作品の中核といえるテーマで、いま思うと興味深い。あとは、「誘惑は赤い薔薇」が印象的。すりきれるほど読み返すことになった愛読書「クララ白書」の設定の原型は「白い少女たち」にあるけど、<一人称の文体、限りなく日常会話に近いテンポのいい台詞の多用>という氷室さんが創り上げ、後に、いわゆるジュニア小説、少女小説、今で言うライトノベルのスタンダードとまで思われるほどになった文体がここにすでに萌芽しているから。
もちろん、氷室さんの作品のすごさは、その文体だけにあるのではなく、内容の深さ、おもしろさは言うまでもない。でも、今まで本というものに馴染みの薄かった少女たちを夢中にさせるほどの力を、彼女の文体は持っていたのだ。それゆえに「少女小説」というジャンルに押し込められることは彼女の本意ではなかったとは思うけれど、日本の文壇で軽視されがちな「リーダビリティ(読みやすさ)」の高さを、あたしは実は何よりも評価している。新井素子、よしもとばななについても同様だ。小難しいものが高尚だなんていったい誰が決めたんだろう。


1980年

「クララ白書」
集英社文庫コバルトシリーズ
1980年4月15日発行
定価260円
イラスト:原田治








★私の名前は桂木しのぶ。友達からは「しーの」と呼ばれている。家の事情(パパの転勤)で徳心学園中等科の女子寮、クララ舎に入ることになり、憧れの寄宿舎生活!(というかハウスマザーのシスター・アンズヴェリスさまの魅力)に胸をときめかせていたが、驚いたことに、このクララ舎では、途中入寮の生徒に一風変わった入団式が課せられていた。なんと、転入生の蒔子や菊花と共に、寮の調理室に忍び込み、45人分のドーナツを揚げなければならないというのだが・・・。
<目次>

第一章 ドーナツ騒動
第二章 ストレインジャー
第三章 下級生登場+1
第四章 ストレインジャー
第五章 その前夜
あとがき―私の少女期―
もう何度も何度も繰り返し読んだ作品。でも、今回、このイベントのためにまた読んで、それでも懲りずに泣いたり笑ったりしてしまった。 滅茶苦茶に笑える入寮イベント「ドーナツ騒動」から、しーのの親友となるマッキーと菊花の家庭環境や性格のわかるエピソード、しーのに憧れる下級生・夢見と後にしーのの大切な男友達になっていく夢見の大学生の従兄・光太郎の登場、「古事記」を題材に、「アグネス白書」へと繋がる重要なイベントであり、「ヤマトタケル」や「銀の海金の大地」へと開花していく古代ものの原点でもある作中劇「佐保彦の叛乱」をフューチャーした文化祭など、冴子エッセンスのぎゅうう!!っとつまった名作だ。


「クララ白書 ぱーとII」
集英社文庫コバルトシリーズ
1980年12月15日発行
定価300円
イラスト:原田治








★ わたし(<しーの>こと桂木しのぶ)は校内の文化祭が終わって、ホッとひと息。けれど、文化祭の演劇の出演者には見ず知らずの他校の生徒からのラブ・レターが殺到し出す今日この頃。ことに変人だけど黙ってれば美少女のマッキーにはすごい数。年頃の娘を預かる寄宿舎は電話と手紙に関しては非情に厳しくて、男性からの手紙なんて届いた日には、すぐにシスターから呼び出しがかかり、たっぷりしぼられるのだ。でも、ちょっとうらやましい・・・そんな、しーののもとについに初めてのラブレターが!?秀才高・東高の大津雅文くんだって・・・。
<目次>
第一章 ラブレター大作戦
第二章 幻猫ユリウスの怪
第三章 クリスマス・ラプソディ
第四章 菊花危機一髪
あとがき―少女夢―

しーのの初デートにみんながあれこれ指南したり、挙句の果ては尾行したりと、友情と過保護の渦巻く騒動が最高。美意識のかたまりマッキーの意外な初恋も必読。


1981年

「恋する女たち」
集英社文庫コバルトシリーズ
1981年2月15日発行
定価280円
イラスト:石関詠子(初版のみ)
表紙は2版から映画「恋する女たち」主演の斉藤由貴の写真






★あたしには二人の変な友人がいる。何かというとすぐに自分の葬式を出す死に癖のある緑子がその一人。もう一人の汀子は秀才ではあるが、考えることは全く訳がわからない人間だ。もっとも、あたしにしても普通の高校生とはいいがたい。この三人がそれぞれに恋をした。そして、緑子はその美貌にもかかわらず失恋し、汀子は相手の男性と旅行に出かけ、あたしもやっぱり片恋のままに・・・。
<目次>
一、緑子の大いなる死
二、汀子の恋の病
三、ザキと呼ばれる少年
四、尼寺へ行くための方法序説
五、こんにちはと言って生まれてくるために
六、復讐は初めての接吻で
七、ヴァージニティの問題
八、決定的失恋の完全見本(サンプル)二態
九、恋する女たちの宴
あとがき―わが高校時代

大好きな・・・大好きな本です。氷室さんの本は全部好きだけど、読み返した回数ではこれが群を抜いてると思う。片想いをしているときは必ず読んだ。(失恋したときは「シンデレラ迷宮」ね。笑)温泉や健康ランドに行くたび、いまだに絹子さんの女体談義を思い出すのがすごい。
先日、氷室さんの訃報を聴いたときは、正直、信じられない、実感がわかない、だった。
だって、あまりにも若すぎる。あたしと10と少ししか変わらないのに。お葬式に行かれた方のブログなどを読んでいて、「献花台にレモンが置かれていた」という文章を発見、突然、頭の中に「喪服にレモン」という黒と黄色の鮮やかな対比がフラッシュした。「緑子のお葬式だ!!汀子は曼珠沙華で、多佳子はレモン。生協に買いに行って・・・」
そのとき、自分が「恋する女たち」を、そして氷室さんの作品をどんなに愛していたか、を思い出し、お葬式に行くのにレモンを買ってしまうくらい、このお話を今でも身近なものとして愛し続けている人がたくさんいるという事実に、胸がいっぱいになって、初めて涙がこぼれた。

「アグネス白書」
集英社文庫コバルトシリーズ
1981年10月15日発行
定価280円
イラスト:原田治








★あたしは桂木しのぶ。しーのって呼ばれてる。徳心学園中等科の寄宿舎、その名も麗しのクララで、素敵な上級生や可愛い下級生に囲まれ、マッキーや菊花みたいな大親友と一緒に、嬉し楽しの寄宿生活を送ってきたの。そんなあたしも、とうとうこの四月から高等科四年生。寄宿舎もアグネスに移って心機一転、新しい寄宿生活の始まり始まりー。新しい仲間はできるかな。素敵な恋人もほしいなあ・・・。
<目次>
第一章 編入生登場
第二章 とびきりのお茶会へようこそ
第三章 「愛の悲しみ」を聴きながら
第四章 高城さんの恋人
しーのの覚え書き(菊花の〇秘創作ノートより)

言わずと知れた「クララ白書」「クララ白書パート供廚梁格圈
旭川から転校して来た全国ベスト50の天才少女・及川朝衣と同室になったしーのが、クラスにも寄宿舎にも馴染めないうえ、なぜか自分に敵意を見せる朝衣とのつきあいに悩んだり、前作で発覚したマッキーの初恋のその後、ついにしーのの前にブランデンブルグをBGMに現れた理想の男性、あの奇跡の高城さんに恋人が!?などなど大きく動き始めるしーのの高校生活が、もうたまらない楽しさ。


1982年

「雑居時代(上)」
集英社文庫コバルトシリーズ
1982年7月15日発行
定価260円
イラスト:星野かずみ








★啓明高校はじまって以来の才媛と噂に高い「倉橋さんちの数子さん」―それがこのあたしってわけ。それなのに同居中の譲叔父さんに失恋してしまい、大ショック。がっくりきたあたしは、外国へ教えに行く花取教授宅の留守番をかってでた。ところがその家に押しかけてきたのが、同じ学校の満画家志望の家弓って問題児に北大志望の浪人生・勉。かくして女二人男一人の雑居生活がはじまった。
<目次>
第一話 かくして雑居生活は始まるのだった
第二話 (番外編)家弓(あたし)には家弓(あたし)の事情があった
第三話 とりあえずハッピーエンド―嫁小姑戦争に終わりはあるか?
第四話 彼はジャムしか愛さなかった
第五話 買われた花嫁は紅バラを拒んだ
第六話 人生は百万のリハーサルと体力を要求する芝居だ

このお話も大好きだった。高校の生物の時間に、<ヒドラ>が教科書に登場し、「ヒ、ヒドラって、あの、花取のおっちゃんが研究してて、えーとミジンコが好物の・・・あれ?!」と、唐突に「雑居時代」を思い出し、教授邸の冷蔵庫にびっしり詰まったヒドラを思い出して、笑いが止まらなくなった記憶が・・・。
この物語の「外国の客員教授でいくために留守になるお屋敷の留守番を頼まれて友人二人と同居」という設定は氷室さん自身の経験。

「雑居時代(下)」
集英社文庫コバルトシリーズ
1982年7月15日発行
定価260円
イラスト:星野かずみ








★譲叔父さんを清香にとられたあたし―倉橋数子は、なんとかして二人を離婚させようと策をめぐらせてみたけれど、どうも清香のほうが一枚上手って感じで、やることなすことうまくいかない。一方、家弓と勉とあたしの雑居生活は、売れっ子少女マンガ家のアシスタントにかり出されたり、演劇部から新入生クラブ勧誘会の主役を依頼されたりと、ますますにぎやかに過激になってゆくのであった…。
<目次>
第七話 漫画家ほど素敵な商売はない!……と思う
第八話 哀愁のトム―その時、彼はキャベツを買った
第九話 ヒロインの条件は”絵になる”ことなのだ
第十話 (番外編)嗚呼、受難の日々―鉄馬(ホモ)には鉄馬(ホモ)のいわくいいがたい苦しみがある
第十一話 続・嫁小姑戦争
あとがき

「小説ジュニア」1981年10月号から1982年6月号に掲載された氷室さん初の連載作品。あとがきに、初めての連載で<締切り>の恐ろしさを思い知ったというようなことを書かれていますが、この時期って原作を担当した藤田和子さんの「ライジング!」の連載と完全にかぶってるので、それはそれは大変だっただろうと・・・。

「アグネス白書ぱーとII」
集英社文庫コバルトシリーズ
1982年10月15日発行
定価260円
イラスト:原田治








★あたし桂木しのぶは、徳心学園高等科の女の子。親友マッキーや菊花や朝衣たちから”しーの”と呼ばれている。寄宿舎アグネスでの生活や、文化祭、バザーといった行事のある学園生活は、うれし楽しの毎日だけど、けっこう悩みもあるのよね。BFとの行き違いとか、生徒会の横暴とか・・・ね。それもこれも、まあ、あたしのかけがえのない「青春白書」の一ページにはちがいありません。
<目次>
第一章 往復書簡
第二章 文化祭ふたたび
第三章 ラブストーリー
第四章 しーのはしーの
[あとがき]書く楽しみについて

清酒「男道」酒造株式会社創業八十周年記念パーティーのために旭川に戻ったきりアグネスに帰ってこないマッキーの実家での騒動を、しーの・菊花・マッキー・朝衣4人の手紙形式で綴った第一章、高等科生徒会長・成田志津子さんの横暴でめちゃくちゃになりそうな文化祭を救うため、友人たちと駆け回る第二章、冷戦状態の光太郎と仲直りできるかどうかの瀬戸際をバザーとからめて描いた第三章、光太郎の家への初めて訪問と生徒会選挙が交錯する第四章。
やっぱり、しーのはしーのだなあ(笑)
中学時代、世界名作全集、日本名作全集、推理小説の三本柱を中心に読書を展開していた氷室さんは、文学の主人公のごとくクールに超然と過ごし、高校生になって初めて、泣いたり笑ったり素直に登場人物が行動する家庭小説を読んで、自分の思うままにふるまい生活を楽しむという機会を失ったことに気づいたんだそうだ。”こうあるべきだった”中学時代を追体験しようと書いたのが「クララ白書」のシリーズ。
なんだか、その気持ちわかるなー。
もちろん、あたしにも嬉し楽しの中学高校時代はあったけど、しーのと一緒にもう一度生きた徳心での中学高校生活はほんとに楽しかったです。ありがとう。


1983年

「ざ・ちぇんじ!―新釈とりかえばや物語―(前編)」
集英社文庫コバルトシリーズ
1983年1月15日発行
定価260円
イラスト:峯村良子







★時は平安、所は京、世は泰平の極み。家柄の良さを誇る権大納言も、深刻な悩みを抱いている。権さんには二人の妻がいて…ま、それはいいとして、悩みとは二人の子どものことなのだ。女の子は頭脳明晰、明朗活発で男の子として育ち、綺羅君と呼ばれて都中の評判。一方男の子は、これはもうすぐ失神してしまうほど繊細な神経の持ち主。今日も「大変どすえ…」と、待女の声が屋敷中にひびき渡る。
<目次>
一 権大納言の憂鬱
二 綺羅二人
三 北嵯峨にて
四 綺羅の元服と裳着
五 帝の憂鬱
六 綺羅君の結婚!?
七 綺羅の憂鬱
八 綺羅姫の出仕!?

平安時代後期に成立した作者不詳ながら、長く語り継がれる物語「とりかへばや物語」を氷室流少女小説に仕立てた元気いっぱいのラブコメディ。のちにオリジナル作品「なんて素敵にジャパネスク」へとつながっていく氷室さんの平安絵巻の第一作。

「ざ・ちぇんじ!―新釈とりかえばや物語―(後編)」
集英社文庫コバルトシリーズ
1983年2月15日発行
定価260円
イラスト:峯村良子







★女なのに男として帝に仕えるという秘密に、綺羅は日ごと悩んでいた。さらに弟までが女として宮中入りするとは…。しかも、女の身でありながら結婚してしまった綺羅だったが、できないはずの妻の三の姫に赤ん坊ができてしまったなんて、バカな。相手はプレイボーイの宰相中将、浮気のつもりだったのだ。その中将に、今度は綺羅が迫られた。なんと男のはずの綺羅に…。バレたのでは。秘密が秘密を呼び、事態はさらなる混乱へ。
<目次>
一 宰相中将の煩悶
二 綺羅無尚侍
三 衝撃!
四 綺羅、妊娠!?
五 春の別れ
六 夏の嵐―弟君の反乱
七 弟君の女御入内!?
八 ざ・ちぇんじ!
あとがき

氷室さんが高校生のときに平安文学にはまって、『源氏』や『枕草子』とはひとあじ違う平安文学を探して見つけたのが、『とりかえばや物語』
講談社学術文庫の4巻の現代語訳のところだけを読んで、いつか書きたいと思っていたとか(笑)
「男と女が入れ替わったり、男っぽい姫君がそのまま男姿で参内しちゃったり、女房になって出仕した男君が、女東宮を妊娠させたりとか、なんかすごく悪趣味なところがよかった」と言ってらっしゃるけど、それを全然、下品や下世話にならずに、笑えるお話に仕上げた氷室さんの手腕がすごいです。

「シンデレラ迷宮」
集英社文庫コバルトシリーズ
1983年6月15日発行
定価300円
イラスト:藤田和子








★あたし(利根)は、朝、目が覚めたら、まるで知らない世界に来ていたの。広い部屋で、覚えがないんだけど、招待客があたしを見つめていたの。踊り子のオディール、暁の国の姫君ゼランディーヌ、ソーンフィールドの奥方、そして王妃。あたしは彼女たちの言葉に従ってそれぞれの家に滞在することになったんだけど、彼女たち、まるで昔のあたしの姿を見ているようなの。
<目次>
序 章 目覚める前に・・・
第二章 目覚めた朝はお茶会だった
第三章 森を出るべきではなかった
第四章 シーラカンスの夢
第五章 シンデレラ迷宮
[あとがき]『シンデレラ迷宮』あれこれ

恋愛小説を書こうと思い立って、「一途に恋い焦がれた初恋の人と、めでたく結婚にこぎつけた女の子の話なんかロマンティックでいいなあ」といいながら、「その花嫁の幸福なウェディングドレス姿をみつめる、哀しい瞳の少女の姿」を思い浮かべてしまい、その子のための物語を紡いでしまうのが氷室さんなんだなあ・・・。そこが好きだ。こういう視点のスイッチが上手にできるのが氷室さんのすごいところで、「雑居時代」がいろんな登場人物の独白で語られたり、「なんて素敵にジャパネスク」の小萩や守弥といった脇役の視点から同じ事件を見るとこうだったのか!という部分がおもしろい「ジャパネスク・アンコール」(と「続―」)などに現れている。ある物語をどの登場人物の立場からでも書ける、ほど、キャラクターや物語世界がきっちり頭の中にできていること、感情移入の能力の高さ・・・これが氷室さんの魅力じゃないかと、あたしはちょっと思っている。

「少女小説家は死なない!」
集英社文庫コバルトシリーズ
1983年11月15日発行
定価300円
イラスト:峯村良子








★東京で快適なひとり暮らしを楽しんでいたあたし(北海道の土地成金の娘、朝倉米子)のアパートへ、小説家の火村彩子センセが乗り込んできた。同郷のよしみ、ささいなミーハー心で、たった一度、ファンレターを送っただけなのに!速筆の彩子センセはめったやたらと小説(文章がへんてこなファンタジー)を書くんだけど、一向に採用にならない。そのたびに、やつあたりされるあたしはどうしたらいいの?!才能ないのよ、あきらめて!でも、自己中心的な少女小説家は自分の才能を信じて疑わないのよ。この世界で生き残るためには、他の作家たちを蹴落とすしかない!
売れない小説家・火村彩子センセはそう考えた。
事実かフィクションか!? 恐るべき少女小説家の実態(?)を描くコメディ。
<目次>
第一章 少女小説家は飢死しない
第二章 少女小説家に明日はない
第三章 少女小説家に良心はない
第四章 少女小説家に仁義はない
第五章 少女小説家に負けない!
第六章 少女小説家は死なない!
あとがき

キャラが立ってて、いい。頼まれたら嫌とは言えず、人のいい田舎育ちの女子大生の米子に、異様なまでの思い込みと押しの強い火村彩子先生をはじめ、非常識で、異常で、過激な少女小説家たちがすごい。
美少年や美青年がてんこ盛りで耽美とグロまみれの今で言うBL作家。
お嬢様なのに書く作品は記号とマークがはじけ飛ぶ、るんるんポルノ作家。
結婚したくてたまらないのに、もてなくて、ハーレクインのような恋愛小説を書きまくって憂さを晴らすロマンス作家。
旧仮名使いの吉屋信子ばりの少女小説を書く男性オタク作家。
そして、大手出版社のお荷物で窓際部署であるジュニア小説誌編集部のどこか屈折した編集者たち。
身近なネタを笑いにした痛快などたばたコメディ。こういう「笑い」と胸がきゅんとするような恋の両方を描けるのが氷室さんなのだ。


1984年

「シンデレラミステリー」
集英社文庫コバルトシリーズ
1984年3月15日発行
定価300円
イラスト:藤田和子








★万里という親友もできて、薔薇色の現在(いま)を楽しんでた―はずのあたし(利根)なのに、またここへトリップしちゃったの。夢の世界、シンデレラの国へ。ところがそこでは、大好きなジェインが失踪してしまってた!!坊ちゃん貴族のロイ、絵描きのエリオット、どこか悪党っぽいリチャード・・・ジェインをめぐる男たちと、それにまつわる謎(ミステリー)の数々。あたし、きっとジェインを捜し出してみせるわ!!
<目次>
序 章 眠りの前に・・・
第一章 なにがジェインに起こったか?
第二章 緑のジェイン
第三章 なぜ、彼を愛さなかったのか?
第四章 わたしの愛したピカロ(悪党さん)
あとがき―さよならを言いながら

「シンデレラ迷宮」の続編で、シリーズ(といっても2冊ですが)完結作。
ジェイン探しのミステリーと供に、また自分の心の謎を解きほぐす旅が始まる。
誰もいつまでも、子供ではいられない。傷つきながら、大好きだったおとぎの国の親友たちに、それでも笑って手を振って、さよならをするための本。
少しだけ対処の仕方が上手になったとしても、思春期に悩み心を痛めた事柄は大人になっても、そんなには変わらないのかもしれないね。

「なんて素敵にジャパネスク」
集英社文庫コバルトシリーズ
1984年5月15日発行
定価340円
イラスト:峯村良子








★あたし、大納言藤原忠宗女瑠璃姫(だいなごんふじわらのただむねのむすめるりひめ)、十六歳。初恋の人、吉野君(よしののきみ)との清らかな思い出に殉じて、生涯独身で過ごそうと決心しているの。だから、世間体を気にして、うるさく結婚をすすめるとうさまとは毎日のように大喧嘩よ。そんなある夜、とうさまの陰謀で権少将が夜這いをかけてきた。「強行突破の既成事実」で結婚させられるなんて、ああ、絶対絶命よ!平安朝どたばたラブコメディ決定版の開幕!
<目次>
第一話 お約束は初めての接吻で の巻
第二話 初めての夜は恋歌で囁いて の巻
第三話 初めての夜よ もう一度 の巻
あとがき

女の子がいつも受け身で待ってるだけなんて、つまらない。どこへでも行くし、自分のことはちゃんと自分で決めるし、自分の目で見たこと聴いたことで物事で判断する、好きな人や大事な人は自分で守る。いまでこそ、そんなに珍しくはなくなった「行動するヒロイン」だけど、当時は新鮮だったし、それを下手したら一生屋敷の外を知らずに過ごしちゃうような時代の高貴な家柄のお姫様というキャラにはめちゃったのが、とびきり痛快だった。ただただ自分の心に素直で、人に優しい瑠璃さんは、とても愛しい。

「蕨ヶ丘物語」
集英社文庫コバルトシリーズ
1984年8月10日発行
定価300円
イラスト:峯村良子








★北海道のド田舎、陸の孤島?蕨ケ丘には、古色蒼然たる名家、我が権藤家が君臨している。ところが、長女・長子姉さまがめでたく勘当されて以来、権藤家四人姉妹の和は崩れ、小梅おばあさまの厳しい目の光る中、跡継ぎを互いになすりつけあう凄絶な闘いが始まった。あたし(次女・次子)だって戦うぞ。命をかけて戦うんだ。で、計画したのが擬装駆け落ちなんだけど、相手がなんと『薄野の帝王』と呼ばれるプレイボーイの洋之介・・・。不安は残るのよねえ。
<目次>
ラブ・コメディ 編
ライト・ミステリー 編
純情一途恋愛 編
大正ロマン 編
あとがき

「実にもう田舎はパワフルであり、スリルとサスペンスに満ちているのです」「どこにでもありそうなムラと、そこで生きてる平凡な、だけどエネルギッシュな人たちは私の憧れなんだなあ」という氷室さんが送る素敵なローカル・コメディ。

「なぎさボーイ」
集英社文庫コバルトシリーズ
1984年9月15日発行
定価300円
イラスト:渡辺多恵子








★身体は小作り、女顔、しかも名前が「なぎさ」!これらにコンプレックスを持ちつつ、男気いっぱいの少年なぎさくんが恋に受験に悩みながら成長していく姿を描いた友情コメディ。
<目次>
第一話 俺たちの序章
第二話 俺たちの革命
第三話 俺たちの乱世
あとがき
今回、出品にあたって再読してやっと気づいた。大人になってから、渡辺多恵子のまんがを読んで(「ファミリー」とか「はじめちゃんが一番!」とか)なんだか妙に懐かしい気持ちになったのは、この作品で見慣れた絵だったからだー。そうかー。謎がとけて、すっきり(笑)


1985年

「多恵子ガール」
集英社文庫コバルトシリーズ
1985年1月15日発行
定価320円
イラスト:渡辺多恵子








★「特別な人」――そう、彼の前ではとびきりの自分でいたい。多恵子にとってなぎさはそんな男の子。シャイなくせに肩肘張って勝手にあたふたしてる、かくれ硬派のなぎさくんを、幼なじみの多恵子の目から眺めてみれば・・・。
「なぎさボーイ」の姉妹編というかペア編。
<目次>
第一章 女の子以前―十三歳
第二章 遅過ぎた予感―十五歳
第三章 あなたについて考えている
あとがき

あ、もちろん、「北里マドンナ」も一緒に読んでね。
同じ出来事を、別の人間の視点から描くとこんなに違うんだ、ということを初めて意識した作品かもしれない(笑)中学生にして、男女の精神構造、考え方の違いというのは、こんなに顕著なものなのか?と(笑)でも、多恵子の健気さ、幼いなりの恋の真摯さは、大人になって読んでも、うるっときてしまう。

「なんて素敵にジャパネスク2」
集英社文庫コバルトシリーズ
1985年4月15日発行
360円
イラスト:峯村良子







★『入道の変』の解決のために瑠璃姫と一緒に活躍した鷹男の東宮が、即位して新しい帝となった。だが、浮気グセは相変わらずのようで(?)、熱心に手紙や使者を送ってくる。それなのに許嫁の高彬は煮えきらない態度で、まったく頼りにならない。とうとうキレた瑠璃姫は、出家するために縁の尼寺に駆け込むが、その夜、実家の三条邸が炎上した。瑠璃姫を恨む何者かが放火したらしいのだが。
<目次>
一の巻 太秦へ
二の巻 初めての夜に燃えて
三の巻 あれは妖しき美しき鬼
四の巻 夜闇に 鬼は妖しく囁く
五の巻 鬼は荷葉の女を喰らう
六の巻 人を愛する眼は青く人を憎む眼は赤い
七の巻 高彬、鬼を斬る!
八の巻 み吉野に 雪は降りつつ
あとがき

ときは平安。大納言家の姫といえば、深窓の令嬢・・・のはずなのだが、16歳の瑠璃姫はとんでもない、おてんばで・・・???東宮(とうぐう。皇太子のこと。帝に即位前の身分)の暗殺事件に巻き込まれるは、初恋の人ために命をかけちゃうは、しまいには後宮を揺るがす大スキャンダルの影の悲しい恋にまで一肌脱いじゃう大活躍。どたばたコメディと胸がきゅうっとなるようなラブ・ストーリーが融合した最高の平安物語絵巻。特に、この2巻のラストには何度、号泣したことか・・・。

「ジャパネスク・アンコール!」
集英社文庫コバルトシリーズ
1985年7月15日発行
定価280円
イラスト:峯村良子








★笑いあり涙ありの平安物語絵巻「なんて素敵にジャパネスク」のファミリー総出演の番外編。 都を揺るがした、帝に対する謀叛未遂事件から数ヵ月。首謀者であった僧の唯恵が生きているという噂が密かに流れた。吉野に篭もっている許嫁の瑠璃姫のためにもなんとか唯恵を逃したい高彬が、ひとりで調査を始める『高彬のジャパネスク・ミステリー』と、高彬の乳兄弟である守弥が“物の怪憑き”と評判の瑠璃姫との仲を引き裂くために、ある陰謀をめぐらす『ジャパネスク・スクランブル』の2編を収録。
<目次>
高彬のジャパネスク・ミステリー の巻
ジャパネスク・スクランブル の巻
あとがき

自分が書いた小説の登場人物は全部愛してしまうという氷室さんの博愛主義っぷりが遺憾なく発揮された作品。他の本の感想でも書いたけど、どの登場人物の視点でも物語の別の側面を描けるという、確固たる作品世界と、今で言う「キャラ立ち」の良さ、は氷室さんの作品の最大の魅力です。


1986年

「ヤマトタケル」
集英社文庫コバルトシリーズ
1986年3月15日発行
定価500円
絵:森田じみい








★そのころ、日本は倭を中心に、ようやくひとつの国としてまとまろうとしていた。乙女のような美しい容姿のなかに猛々しい魂を秘めたヤマトタケルは、父、倭の大王の命のままに、熊襲を、出雲建を、蝦夷を、次々と征伐してゆく。だが、神々に愛され、万人を魅了するタケルに、なぜか大王だけは冷たかった…。ひたすら愛し、闘い、悲運のうちに逝った王子の伝説が、今、華麗な絵物語として甦る!! (カバー表紙見返しの紹介文より)
<目次>
美夜受姫(みやずひめ)
健(タケル)
大王(おおきみ)
美夜受姫

武比古(たけひこ)

大王

あとがき

「古事記」に登場するヤマトタケルのエピソードをもとにした歴史ファンタジー。「クララ白書」を書いているころ、「古事記」にはまっていた氷室さんが(そのことは「クララ白書」の作中劇「佐保彦の叛乱」でもわかる)3日で91枚の短編を書き、少しずつ手直しして、1984年「コバルト」秋の号掲載のために、美夜受姫と武比古の章を書き加えたのが本書。和邇氏の日子坐(ひこいます)も出演(?)していて、すでに「銀金」の種みたいなものができていたことがうかがえる作品。

「続ジャパネスク・アンコール!」
集英社文庫コバルトシリーズ
1986年6月15日発行
定価340円
イラスト:峯村良子








★若君(高彬)と瑠璃姫との仲を裂こうとするわたし(守弥)は、新たな策謀を胸に、姫が静養している吉野に乗り込んだ!!(『守弥のジャパネスク・ダンディ』)
わたくし(小萩)が瑠璃さまにお仕えするようになって、もう八年。瑠璃さまとの奇妙な出会いを、日記に認めてみました。(『小萩のジャパネスク日記』)
いよいよ京へ御帰還よ!!小萩とふたり、おしのびで京へ近づいたあたし(瑠璃姫)に、思いもよらないお出迎えが!?(『瑠璃姫にアンコール!』)
<目次>
守弥のジャパネスク・ダンディ
小萩のジャパネスク日記
瑠璃姫にアンコール!
あとがき

笑いあり涙ありの平安物語絵巻「なんて素敵にジャパネスク」のファミリー総出演の番外編その2。
「瑠璃姫にアンコール!」は書きおろしで、本編「なんて素敵にジャパネスク2」の直接の続編にあたる作品。「守弥のジャネスクダンディ」(とオマケの小萩の日記)が「ジャパネスク・アンコール!」に入れられなかったので、やむなく「瑠璃姫にアンコール!」とカップリングで出した「だから『なんて素敵にジャパネスク3』とアンコール編がくっついた、本編以上の”ほとんど本編”」とあとがきで氷室さんが書いている。「なんて素敵にジャパネスク2」と「3」のあいだに読むと、しっかり繋がります。


1987年

「冴子の東京物語」
集英社
1987年5月25日発行
定価780円
新書判ハードカバー
装丁・装画:永沢まこと







★女ひとりの東京ライフ。超カゲキ超パワフルな冴子さんの愛とナミダと純情ものがたり。
長電話魔で引越し魔の冴子さんは、莫大な長距離電話代を浮かすため東京への引越しを断行、女ひとりの東京ライフが始まった。砂漠といわれる東京で、人の情に涙し、軟弱な男たちにカツを入れ、国鉄民営化に父の鉄道マン人生を想う。気鋭の人気作家が熱いハートと、クールな視点でつづる笑いと涙のエッセイ物語。 (帯より)
<目次>
はじめに―なぜ、東京物語なのか。/番外篇の女/思い込み/ABOは知っていても/桐壷返り/一子相伝の美学/記憶/女の長電話/間違い電話はミステリー/病は気から/悪くない街/ヨソイキ語/親心/父の国鉄物語/舞台裏はたのし―競馬篇/十年ののち/惚れる/女ひとり旅作法/私の取材旅行/アンケートをとりたい/説教ばあさんになる日/育児ゲーム/三界に家なし/女の苦笑い

集英社の月刊情報誌「青春と読書」に昭和60〜62年に連載されたものを集めたエッセイ集。これまで氷室さんの作品は「小説ジュニア」や「コバルト」誌に掲載されたものや書き下ろし作品が集英社文庫コバルトシリーズで刊行されるかたちだったから、初の単行本である。


1988年

「なんて素敵にジャパネスク3<人妻編>」
集英社文庫コバルトシリーズ
1988年5月10日発行
定価370円
イラスト:峯村良子







★かつては、物の怪憑きの姫なんていわれてた瑠璃姫も、おさななじみのエリート公達、高彬と結ばれ、今や右大臣家の北の方としてしっかり新妻している。これでやっと落ち着きある女に、と思いきや・・・母君は、新婚早々高彬が浮気してるなんて言うし、あたしはあたし二度と会えないと思っていた峯男と、意外なところで再会するし・・・。ほんにまあ、人妻瑠璃の心は、揺れ動いているのでございます。
<目次>
序章  人妻の憂鬱
第一章 忘れえぬ人
第二章 不倫のときめき
第三章 白梅院にて
第四章 疑惑の胸騒ぎ
あとがき

「お芝居でいえばインターミッション(幕間)という感じでしょうか」とあとがき書かれているように、アンコールの続きというか、「なんて素敵にジャパネスク」をおおまかに「吉野君編」と「帥の宮編」に分けたとして、そのつなぎにあたる部分ですねー。でも、ここの繋がりや伏線が上手くいってこそ、この後の盛り上がりがあるわけで、キャラクターの性格の書き込みというか、シチュエーションプレイがすごく緻密になされていて、あらためてすごいなあ・・・と思う。

「北里マドンナ」
集英社Cobalt Selection
1988年11月30日発行
定価750円
新書版ハードカバー
カバーイラスト:渡辺多恵子







★親友は、誰よりも高いハードルだから。親友だけどライバル。僕の恋も悩みも喜びも、いつだってなぎさがそばにいた・・・。
<目次>
第1章 槇修子
第2章 槇修子ふたたび
第3章 原田多恵子
第4章 麻生野枝
第5章 雨城なぎさ
素敵な男の子になってね(あとがき)

「なぎさボーイ」の兄弟編。第5章は書き下ろし。三部作、最後の作品。「なぎさボーイ」「多恵子ガール」「北里マドンナ」この3作でひとつの作品なんだとあたしは思ってます。ああ。「野枝」の名前のついた本も出してあげてほしかった。雨城なぎさ、原田多恵子、森北里、麻生野枝。幼なじみ四人組の恋や友情を描いた連作。
同じ出来事を視点を別の人物の視点から描くとこんなに違う・・・幼くても男女の違いや、個々の性格、考え方の差ってすごいんだな、っていうか、それを微妙に繊細に書き分ける氷室さんがすごいなって思ったのを覚えてる。
「なぎさボーイ」「多恵子ガール」は雑誌掲載から、集英社文庫コバルトシリーズという今までと同じ流れだったけど、この「北里マドンナ」は、まずこのCobalt Selectionで単行本化されてから、コバルト文庫になった。文庫のイラスト担当は江野和代さんで、彼女の絵も素敵だけど、このシリーズといえば、「やっぱり渡辺多恵子さんのイラストだよねっ!!」というファンには、彼女の描く表紙の北里くんがうれしいかも。(残念ながら本文中には挿画はなし)

「冬のディーン夏のナタリー1」
集英社文庫コバルトシリーズ
1988年12月10日発行
定価310円
イラスト:藤田和子








★ホントは不合格だったくせに、はずみでTVの合格インタビューをカッコよくキメてしまったワタル。思えばそれがマチガイだった。ゆり絵は悲劇のヒロインじみた電話をよこすし、蓉子とは因縁めいた再会を果たして絶句するし。昔のコトは忘れ、すべりどめの大学で平和なキャンパス・ライフを送りたいというワタルの願いは、早くもスタートから華麗な(?)つまずきを見せるのであった…。
<目次>
第一章 冬のディーン
機.ャンパスでインタビュー
供.謄譽咫Ε僖縫奪
掘‘販宣言
検/震訝罎離魁璽
后,椶のかわいいディーン
第二章 夏のナタリー
機“狃に再会
供_討里箸發世
掘―蕕瓩討痢帖
あとがき―チークダンスのあとで

高校卒業間近のディスコパーティ、遠くの大学へ行く男の子たち、離れるとなると、なんだかセンチメンタルに恋愛めいた気分になって、何人かとキスをした、そんな子の一人が東京に行くはずが家庭の事情で気がつけば、札幌の大学に。駅でばったり。こらー!あのときのナミダとキス返せ!みたいな経験を、お話にしたら、こうなった・・・らしい(笑)なんとなく、わかるなあ(笑)


1989年

「レディ・アンをさがして」
角川文庫
1989年1月1日発行
定価380円
カバー:河田久雄

★ヨーロッパの真珠とうたわれる、森と湖の国アルバからアメリカにやってきたプリンセス・アントワージュ。ロックフェラー家とのロイヤル・ウェディングがそこには待っている。けど、そんなものより可憐なアンは、ディズニーランドに憧れ、それにホットドッグの味に大喜び。だから、たいへん。厳重警備の中からアンはニューヨークの街に飛び出した。そこには青春と夢、そして恋があった。人気最高の著者がフィフティーズ最後の年のニューヨークを舞台に、いよいよ愛と幸福の物語の幕をあけます。(カバー表紙見返しの紹介文より)
<目次>
ごあいさつ
あらすじ
おもな登場人物
第一幕
第一場 老ロックフェラーの書斎
第二場 アントワージュの私室
第三場 歓迎パーティー
第四場 アンの私室
第五場 ニューヨークの街角
第六場(A)舞台リハーサル
第六場(B)家出娘
第七場 ロックフェラー家別邸のマダム・シアラの私室
第八場 デート
第九場 ラルフのフラット
第十場 アンとラルフ/ロックフェラー家
第二幕
第一場 アメリカ・バラエティー/遊園地風景
第二場 ロックフェラー家
第三場 遊園地
第四場 月幻想
第五場 いさかい
第六場 ラルフの葛藤
第七場 ガラスの迷路館
第八場 恋人たち
第九場 観覧車
第十場 ラルフのフラット
第十一場 レディ・アンをさがして
メイキング・オブ・『レディ・アンをさがして』(あとがき)

氷室さんが友人・藤田和子さんの漫画の原作を担当した『ライジング!〜開幕〜』の中で、宝塚をモデルにした宮苑歌劇付属の音楽学校の生徒で、主人公の仁科祐紀(男役志望だったが後に娘役に転向)のために、若き演出家・高師謙司が「ローマの休日」を下敷きにして書き下ろしたミュージカル・プレイ、という設定で用意された劇中劇が、この「レディ・アンをさがして」で、それを小説と脚本を足して2で割ったような感じで作品化したのがこの本。文庫書下ろし作品。よくできたお話で、これだけ読んでも楽しいけど、漫画の中で、主人公たちが動いているのを視覚として見るのは、すごくいい。いまはなきOSK日本歌劇団の演目として、1996年に実際に舞台にも乗りました。氷室さんの大好きな宝塚じゃなかったのが少し残念だけど、観てみたかったなあ。

「なんて素敵にジャパネスク4<不倫編>」
集英社文庫コバルトシリーズ
1989年3月10日発行
定価330円
イラスト:峯村良子







★「守弥は、あたくしにこう申しましたの。なんとか高彬さまと、一夜だけでいいから、契ってほしいと・・・」煌姫は意外なことを言った。なんと、あたしと高彬とを別れさせようと画策するなんて!?早速、あたしは、守弥を呼び出して真相を確かめた。守弥はただただ平伏するのみ。話も落ち着いた頃、今度は高彬本人がやってきた。小太刀を片手に血相変えて。はあ?人妻キラーの宮様が、あたしをねらっているっ!?なめんじゃないわよと怒ったものの、相手はかなりの美男子らしい。高彬も妙にヤキモチをやいてさあ大変。
<目次>
第一話 忘れえぬ夜
第二話 謎の<帥の宮>
あとがき

人気の平安コメディシリーズ4作目は、胸さわぎの不倫編。

「冬のディーン夏のナタリー2」
集英社文庫コバルトシリーズ
1989年5月25日発行
定価370円
イラスト:藤田和子








★一緒の大学ってだけでもホント赤面ものなのに、ましてや同じアパートに住むなんて、「ひと夏の出来事」の相手・蓉子とのあまりに運命的な因縁に、ワタルはあっけにとられるばかり。弟タケルときっちり決着つけなくちゃいけないし、蓉子の親友・美帆もカラんできて、混乱はますます深まる気配。どうやらワタルの望む平和なキャンパス・ライフは確実に(?)遠ざかる一方のようで…。
<目次>
第三章 夏のナタリー
機,△覆燭蓮嘘を、ついた
供ゝ櫺美帆
掘,△覆燭蓮嘘をついた(パート供
検々盒興甍
后,気茲覆
あとがき

1冊目がワタルくんの物語なら、2冊目はずばり蓉子の物語。でも、潤一くんの描写に一番リキが入ったという・・・(笑)この時期の氷室さんは男の子を書くのが楽しかったみたいだ。書くものを「少女小説」という狭い枠に入れられること、元気な女の子が主人公で・・・一人称の文体で・・・いう求められる<カタチ>に少し飽きておられたんじゃないかと感じた。「なぎさボーイ」のあたりから、男の子の視点を意識的に模索していって、この作品を通過して、それが「海がきこえる」のあたりで綺麗に実った気がする。

「碧の迷宮(上)」
角川文庫
1989年10月25日発行
定価390円
イラスト:福山小夜








★栄華をきわめる平安の都。受領を父に持つ紀姫・香姫は、七つ違いの仲のよい姉妹だった。父が単身赴任で遠い任国にいる間、京のはずれに建つ邸でひっそりと暮していたが、姉・紀姫に恋人ができたことから父の怒りをかい、姉は京の都、妹は任地の安房で別れて暮らすようなってしまう。父の勘当もとけ、五年ぶりの対面を前に、なぜか紀姫は琵琶湖に身を投げてしまった。そしてその二年後、十八歳になった香姫は、姉を死に至らしめた謎の恋人を探し出す決意を胸に秘め、安房を離れる。だが、今、京へと向かう香姫の身にも危険が迫る。
宮廷を舞台に華麗に展開される、長編書下ろし王朝ロマンミステリー。
<目次>
第一章 三井の宮の死
第二章 失われた日々
第三章 動きだす日々
第四章 二の宮婉子
第五章 源の宰相朝高

文庫書下ろし作品。未完。
集英社コバルトシリーズで、「ざ・ちぇんじ!」「なんて素敵にジャパネスク」など胸躍る平安王朝ものを描き、古典に造形の深い氷室さんの、大人向け古典もの、ってことで、店主もわくわくして読んだ作品だ。ずっと・・・ずっと待って・・・下巻が出ないまま、とうとう氷室さんは亡くなってしまわれたけど、「あの続きはどうなるんだろう」って、今でも思う(涙)

「プレイバックへようこそ」
角川書店
1989年9月30日発行
定価1000円
新書判ハードカバー
イラスト:峰岸達







★感動のオリンピック、悲喜こもごものお誕生会、愛と青春のクラブ活動、熱狂のアイドルたち―。子供の頃を想い出せば、ワクワク、ドキドキしてきます。氷室冴子のおもしろレトロストーリー誕生。
<目次>
1 オリンピックいろいろ
2 なぜ、アイドルものではないか
3 子供の世界
4 ならいごと編
5 正調ならいごと
6 クラブ活動
あとがき

「月刊カドカワ」連載のエッセイをまとめたもの。氷室さんが自分の世代を相対化しようとする試みであるが、同年代の人には最高にノスタルジックかつ大爆笑な思い出がいっぱいの楽しい読み物であろう(笑)あたしは氷室さんより、11歳年下なのだけど、結構、知ってるネタがあった。いや・・・歳はごまかしてないんだけど(笑)


1990年

「なんて素敵にジャパネスク5<陰謀編>
集英社文庫コバルトシリーズ
1990年2月10日発行
定価390円
イラスト:峯村良子
★帥の宮との直接対決を決意した瑠璃姫は、守弥や煌姫と手を組んである計画を立てる。新三条邸の人々を「子宝祈願」のために大和の帯解寺に行かせて、その隙に帥の宮をおびき寄せる、というものだった。すべてが予定通りに進行するように思われたが、帥の宮はこちらのウラをかいて、いきなり瑠璃姫のところに乗り込んでくる。しかも、初めて対面した帥の宮は、あの鷹男の帝にそっくりで…。
<目次>
第一話 帥の宮登場!
第二話 黄金の接吻
第三話 後宮へ
あとがき

後に手がける「落窪物語」でも、敵役の北の方がすごい!と書かれてるように、やはり物語の重要な鍵を握るのが敵対するキャラの造形、描写。この巻からの帥の宮のスマートな極悪非道っぷりは最高だ。

「冴子スペシャル ガールフレンズ」
集英社コバルト文庫
1990年4月30日発行
定価530円
カバーイラスト:西村しのぶ








★友達とのおしゃべり対談(新井素子、藤田和子、一路真輝、山内直実)
イラスト集(市東亮子、峯村良子、藤田和子、近藤勝也、渡辺多恵子、山内直実、萩尾望都)
読者とのQ&A、エッセイ、全作品リストに加え、未完のミュージカル用脚本「ニューヨーク物語」を収録。氷室冴子の魅力のすべてを徹底解剖したファンブック。十二単衣姿の氷室さんが見られる貴重な本(笑)

「なんて素敵にジャパネスク6<後宮編>」
集英社文庫コバルトシリーズ
1990年7月10日発行
定価390円
イラスト:峯村良子







★なんとかして帥の宮に復讐したい。あたしは彼の屋敷に煌姫をスパイとして入れ、彼が困るようにたくらんだ。帥の宮の愛人の座を確保したい煌姫は、彼の弱みを握れば、それをネタに愛人として一生が保証されると、大乗り気。煌姫は、あたしに新三条邸を追い出されたといって帥の宮に泣きつき、作戦通り彼の屋敷にうまく乗りこんだ。次なるテは、あたしが帝の後宮にもぐりこむことだが・・・。
<目次>
第一章 煌姫との密談
第二章 後宮異変あり!
第三章 淑景舎
第四章 再会オンパレード
第五章 逆襲!
第六章 ふたたびの逆襲!
あとがき

人気の平安コメディシリーズ6作目は、瑠璃姫が事件の真相に少しずつ迫るミステリアスな後宮編。

「プレイバックへようこそ 2」
角川書店
1990年7月30日発行
定価1000円
新書判ハードカバー
イラスト:峰岸達







★覚えてますか、あの頃を。学校給食、学芸会、委員選挙に紅白・レコ大・・・。なつかしさにホロリ、おもしろさにニコリ。氷室冴子が贈るおもいでキラキラのプレイバック、パート2。
<目次>
1 深夜放送
2 学校給食
3 委員物語・番外編
4 委員物語・またまた怒濤の番外編
5 委員物語
6 歌謡曲いろいろ
7 学校行事いろいろ
あとがき

1989年7月号から1990年2月号の「月刊カドカワ」連載のエッセイをまとめたもので、「プレイバックへようこそ」の続編。

「冴子の東京物語」
集英社文庫
1990年10月25日発行
定価360円
カバー・本文イラスト:峯村良子








★長電話魔で引っ越し魔の冴子さんは驚異的な電話料金に猛反省。これなら東京で部屋代を払ったほうが安あがり、と札幌から引っ越しを断行。女ひとりの東京ライフに突入した。砂漠といわれる東京で人の情にホロリとし、軟弱男性にカツを入れ、郷里の父母の人生を想う…。熱いハートとクールな視点が生みだす、超パワフルで超カゲキなエッセイストーリー23。お茶目なイラスト入り。(カバー背表紙の紹介文より)
1987年5月集英社刊の単行本の文庫化。本文の改稿や、書き下ろしはなし。変更点は、イラストがコバルト文庫の氷室作品でもお馴染みの峯村良子さんになったことと、友人である夢枕獏さんの解説がついたこと。単行本、文庫ともに絶版または版元品切れだけど、この解説がおもしろいので、今から古本で入手するなら、文庫版の方がおすすめ。

「マイ・ディア 親愛なる物語」
角川文庫
1990年11月10日発行
定価430円
イラスト:きたのじゅんこ








★タイトルや主人公の名まえを耳にしただけで、少女だった頃の夢と想い出と懐かしさと胸いっぱいになってしまう〈家庭小説・少女小説〉の数数―。本屋さんで目につきにくくなった主人公の少女たちの復活を願って、初めて書き下ろしたマイ・ディア・ストーリー(親愛なる物語)の世界。とにかく、目いっぱい楽しいブックガイド・エッセイ。
<目次>
まえがきにかえて
いとしのマシュウ『赤毛のアン』
オルコットかモンゴメリか『八人のいとこ』『花ざかりのローズ』
ハウス食品におねがい『リンバロストの乙女』
ストーリーテリングのこと『若草の祈り』
軽やかなワルツみたいに『少女パレアナ』
ミスターの魅力『少女レベッカ』『レベッカの青春』
心ふるえて……『十七歳の夏』
ひとやすみにお茶を……『秘密の花園』『あしながおじさん』『丘の家のジェーン』
『昔気質の一少女』他
(付録)友人Aへの手紙
あとがき

何年も経って、いい歳の大人になってから、気づくことってあるんだ(汗)
この本のあとがきを読んでいて、氷室さんが懐かしい「家庭小説の再販」の企画を角川書店に持ち込み、それが実現するはこびになったから、じゃあ「書きおろしの、家庭小説入門みたいなエッセイ、書きましょう!」ってことで生まれたのが本書なんだけど・・・。
家庭小説の再販、って・・・。一時期、角川文庫で赤いギンガムチェックの可愛い装丁で出た<マイディアストーリー>のことだったのか!?
当時はまだ古本屋じゃなかったし、あの一連の家庭小説の復刊と氷室さんを結びつけて考えたことなかった・・・。
日本の女の子のための少女小説(ある意味家庭小説でもある)を書いて、楽しませてくれた氷室さんは、こんな偉大な業績まで(泣)
もう、大部分が再び絶版または品切れ状態になってるみたいだけど、氷室さんのためにも、<マイディアストーリー>も集めて、店に出そうかなあ。ちょっと頑張ってみるよ。
一応、あたしが知ってるかぎりのデータを書いておこう。

角川文庫<マイディアストーリー>
オルコット
「八人のいとこ」 「花ざかりのローズ」 「昔気質の一少女(上下)」 「ライラックの花の下」
「若草物語(上下)」 「続若草物語(上下)」 「第三若草物語」 「第四若草物語」
ジーン・ポーター 「そばかすの少年」 「リンバロストの乙女(上下)」
ケート・D・ウィギン 「ケレー家の人々」 「少女レベッカ」 「レベッカの青春」
E・ネズビット 「砂の妖精」 「若草の祈り」
モーリーン・デイリ 「十七歳の夏」
ミス・リード 「村の学校」 「村の日記」 「村のあらし」
クリスタ・ウインスローエ「制服の処女」
ロザモンド・レーマン「ワルツへの招待」
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古物商許可 大阪府公安委員会第598号




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